NOeSIS-嘘を吐いた記憶の物語- 千夜の章後編:赤い本
千夜の章後編:赤い本
再びの屋上
- 時雨の家族構成まで言い当て、考えと記憶を見透かす上級生。彼女は、時雨の首に付いたこよみの髪の毛を見つけていただけ、と振る舞う。
- 記憶を読み取れるのは事実…なのでは?
- 彼女と話をしている最中に、重いトマトを潰したような音が響く。
- 自殺の邪魔をされた上級生に締め上げられ、落とされそうになる。が、自殺現場に怪物を見つけた時雨は、そのまま意識を失った。
- 帰り際、彼女がぎこちなく名乗った名前は一夜。
憂姫に相談
- 生徒会長は性格を作っていたのではないかと言う憂姫。
【憂姫】
隠していた性格が表に出てきたとき、それに出くわしてしまったの――。
【憂姫】
何故なら――。――お兄ちゃんが、自殺事件に関わってしまったからね――
憂姫もか――。
-
- 憂姫は、千夜が自殺事件を探っていることを知っている。しかしなぜ憂姫「も」なのか。
【憂姫】
ただ単に、カマをかけただけだよ。
でもそのあわてぶりは、何か大変な事に巻き込まれたんだね――。
出会い頭の
- 突然のチョップで一夜を倒した時雨。
【一夜】
――嬉しいっ!!
時雨君っ、私に会いに来てくれたんですねっ!!
-
- 一夜はいつ時雨のことを知ったのか。共有手帳だけで彼の姿を伺えるものなのか。
- 今までは英語だけだったが、ここから一夜はフランス語を多用するようになる。
【一夜】
ふふふ――まったく、もうっ。
随分久しぶりに会ったのに、変わってないな――時雨君。
生徒会室にて
時間軸は、5月末。
- 一つの身体に二つの人格。その異常を正常に戻すためには、どちらかが消えなければならない。
【一夜】
いいえ、少なくとも彼女……千夜は、そう思いつめています。誰よりも私――一夜を、優先してくれているんです――千夜は。
-
- 千夜が消そうとしたのは、果たしてどちらの人格だったのか。
- 「消える」その一言に我を忘れるほどの怒りと悲しみを覚える時雨。
- 千夜の写真を撮ることを一夜から依頼される。
千夜の写真
- 千夜を呼び出すと言って国道に飛び込んだ一夜。そして千夜の特殊能力ボディイメージ操作により、難なく生還。
【千夜】
一夜を傷つける真似だけは、許さない。
遥
- 公園に佇み何かを見ていた遥。
【時雨】
何を――見ていたんだ?
アイツ――。夕闇は公園を飲み込むように、全てをその黒で覆いつくそうとしている。
今日も、一日が終わるのだ。肝心の――オレが見た何か――それを、先輩に聞けぬままに――。
-
- なぜ「先輩に」なのか。
千夜とこよみ
- 千夜の姿をこよみに晒した彼女。
千夜の話
- 一昨日の事で、時雨に伝えなきゃいけない話があった。にもかかわらず、それは時雨のいたずらによって邪魔されてしまった。
昔パーキンソン病で全てを失った映画俳優。真の楽しさや幸せは、病気にかかってから初めて分かった。
【千夜】
あなたも、本当の幸せを見つけてみない?
ウィットが効き過ぎだw
こよみ
- 遠目では「あ〜んしてっ♪」に見えたお昼ごはん。
というか、誰かに見られていたのか?
- 生徒会長が自殺事件に関して裏で動いているという噂を持ち出すこよみ。
あの人が、正義なんて――追い求めるわけがない。
彼女が求めているのは、自分のもう一つの人格を消し去る方法――それについてだ。
-
- 巻き戻ってからの話だと、自分の人格を消し去ってもう一つの人格を守ろうとしていると考えるのが自然ではないか。なぜ時雨はこのように考えたのか。
- 千夜先輩がこよみの前に現れたのは、ワザとではないか。こよみは自殺事件について知っているのだから。
一夜と千夜
【一夜】
私達はね――時雨君。
【一夜】
一つのモノが二つに分かれた訳ではない……そう、思うんです。
-
- 別人だった姉妹。しかし一夜はなぜこの話をしたのか?
しかし――この部屋は不自然にごちゃごちゃしていて、まるで――。
必要の無いモノ――そういうモノで埋めて、何かを隠す――かのように。
オレの視線をかわし続けている……、そんな気がした。
公園の遥
- 地面を見続ける遥。
- その場所は、愛した猫の殺された場所。
【時雨】
なんだ――その。
地面って、平らだよな。
【遥】
――?
何を、当たり前の事を言ってるの?
【時雨】
子供の頃さ、山を作っても、穴を掘っても……。
一週間もすれば、なんか分かんねーけど、平らになってる。
【時雨】
だからさ――。
地面が、平らになってら教えてくれよ。
【時雨】
ソコを見ていた理由は――言わなくてもいいから――。
二重人格
- 二重人格の話に驚いた憂姫は、そんな二重人格の話、聞いたことがないと言った。
【憂姫】
二重人格ってのは、人格が一つじゃない事を指すの。
そして滅多に――二人だけって事はない。
【憂姫】
人格障害の問題は、いくつ人格があったとしても――マトモに会話出来る人格が存在しないって事。
気になることを語る憂姫だったが、時雨は途中で寝てしまった。
月曜日の放課後
- こよみの前に現れた千夜について、こよみに対する宣戦布告であると語る一夜。
- 千夜の自殺について口にしようとする時雨の、唇を塞いだ一夜。
【一夜】
ええ。
あなたに――時雨君にその先を言われたら、きっと――千夜はとても傷つくと思うから――。彼女の決心がつくまで、黙っていて――欲しいんです。
- 襲いかかるこよみを封殺する千夜。
【千夜】
私はね、一夜の身体を守る――義務があるの。
- 蛾と蝶の区別がつかないヒト、と指摘された千夜が漏らしたのは「そんな所まで似せなくていいのに」という言葉。
- 蛾には、夜の蝶という言葉がある。時雨の口からそれを言わせるのこそが、一夜から千夜へのあてつけだと言う。
【千夜】
蛾と蝶の区別のつかない人間――それは、一夜の姉の事よ――。
-
- 一夜というのは、姉の名前ではないのか?
- 5年前に死んだ姉。
【時雨】
それは――大変だったな。
辛かったろ、先輩――。
【千夜】
ふふ――そうでもないわ。
だって私はあまり――姉の事を知らないもの。
自分語り
――鏡の中に写る、もう一人の一夜――。
彼女が変わったのは、5年前、姉が――死んだときの事よ。
姉は人付き合いも上手くて、とても社会性のある人だった。
それからの一夜は、死んだ姉の服を着て、死んだ姉の表情を真似てばかりいた。
鏡の前の、私に向かって――ね。
私は鏡だから、精一杯彼女の表情……いえ、彼女の姉を真似ていた。
とてもぎこちなく、ね。ついに――話し方が姉ソックリになったとき、もうそこに一夜はいなかった。
まるで、姉の生き写しだった。
これじゃあ死んだのは姉ではなくて、妹の一夜みたい、そう…思うくらいだった。そんな歪みがあったからからかしらね、鏡のなかの私が、外に出られるようになったのは。
だって――もう一夜じゃなかったもの――。
鏡は、本人の生き写し――。
一夜で無くなったのならば、私が鏡の中で一夜を真似る必要は、無くなったの……。
だってもう――鏡の外の一夜は、いなくなってしまったのだから――。
自殺事件
- 四人目は自宅ガレージのシャッターに頭をひき潰された。
- 五人目が飛び降りた前には化け物がいた。それが見えるのは時雨だけ。
- 赤い本。自殺の方法が記された本。5年前に事故死した姉の、形見。姉の次に手にしたのが先輩。
- 六人目は水曜日に首を吊る。本を必ず取り返す、彼女から。先輩は次の犠牲者を知っている、様子。
遥とご飯
- 自殺事件のことを隠そうとするこよみ。そして何かを知っている遥。
【遥】
仲――いいの?……悪くは無い、そう――答えようとした矢先。
【遥】
一夜さん――じゃあ、無い方と――。
千夜
- 遥のことは知らない千夜。心当たりとすれば、簡単に誘導尋問に引っかかってくれる時雨だけ。
- 水曜日の放課後に時雨を誘う千夜。自殺阻止が嫌だから、誰がどこで死ぬのかは教えてくれない。ならばなぜ時雨を同伴しようとするのか。彼女は何を隠しているのか。
遥の依頼
- 生徒会長を連れて、行って欲しい場所がある。次の犠牲者の住所。すぐに行こうと誘う時雨だが。
【遥】
その必要は無いよ。【時雨】
――どうして、だ?【遥】
こよみが――時雨君の夕飯の買い物に行くって、さっき帰ったから。
【遥】
私だって――友達を疑いたくなんかっ、ないよ――っっっ!!!
【遥】
でも――たまに感じるんだ――。
こよみ――あの子が、すごく冷たい目をしている事を――。
【遥】
きっと過去に――すごく残酷な事をしている……そういう目を――。
-
- 遥はこよみの過去を知らないはず。つまりこの台詞は偶然なのか?
千夜の誘い
- なんとしてでも本を手に入れたい千夜は、時雨と共に遥に言われた場所へ向かう。
私の場合はね、殺人の章に切り替わったとしても――。
一夜に使わせれば、目的が達成出来るのだけれどね。
-
- 千夜が殺したいのは、結局自分だったのか?一夜ではなかったのか?それとも、この千夜は既に一夜なのか?
【時雨】
わざわざ二重人格だとバレるリスクを負ってまで、こよみの前に現れて――。
でも、アイツの記憶は読まなかった……。
【時雨】
そんな無駄な労力、先輩が割くわけが無い。
憂姫との遭遇
- モノレールに乗ろうとしたところで憂姫と遭遇。
【一夜】
この学校には、人を惹きつける不思議な魔力――みたいなものがあるのでしょう。
でも、憂姫ちゃんとはね、彼女が入学する前から……。
【憂姫】
ねっ、ねえお兄ちゃんっ!!
-
- どうして一夜を遮ったのか。入学前の接触が知られてはいけないのか。単にモノレールが過ぎて目的を達成できたからなのか。
電車の中
- 降りる駅には、千夜と一夜の祖母の家がある。
六人目
- 六人目を葬ったのは、首吊りではなく雪崩の頁。土砂崩れだった。
こよみの靴
- こよみの靴の裏、溝の間には、少しだけ泥と草が挟まっていた。
【憂姫】
こよみが帰ってきてから、自分の靴を磨いていたんだけど――。
さっきのお兄ちゃんの行動と、何か関係有るかな?
-
- こよみの靴に泥と草が挟まってるのは、遥がそういう指示をしたからだとして、わざわざ磨いたのはなぜか。それとも憂姫の嘘なのか。
【憂姫】
あそこだったら、そうだね――がけ崩れ、とか?大当たりだった。
【時雨】
――なんで、分かる?
【憂姫】
土の匂いがするんだよ、微かにだけど――。
お兄ちゃんと――。――こよみから――
-
- この時点で憂姫はがけ崩れのことはおそらく知らないはず。ということは、やはり優れた洞察力を持っているのは本当らしい。
水族館チケット
- こよみから水族館チケットをもらう。こよみに対する疑念が晴れない時雨からは、ほとんどやり取りがなかった。
動物園
- 間違えて動物園に来てしまった。先輩はネズミが大嫌いだったw
- 子供は大人になることができる。しかし大人は子供に戻れない。
【千夜】
私は――。
【千夜】
――私は、一人で全て片付けるつもりだった。
その覚悟もしていた。
【千夜】
でも――どうして――。
こんなに心が、揺らいでしまうのか――。
【千夜】
時雨君の――せいよ――。
あなたが私の前に現れたから――。――もう一つの可能性に、気がついてしまったの――。
その可能性はきっと、今のまま、二つの心を持ちながら、世間に隠しながら生きていく、大人の生き方。
遥とこよみ
- 遥に泣きつかれた時雨。その姿を、こよみが見ていた。
- 水曜日の夜、繁華街でこよみと話をすると言う遥。
憂姫
【憂姫】
なんで――っ!?
【憂姫】
なんでなの――っ?
こよみには、お兄ちゃんしかいないんだよっ!!
【憂姫】
こよみは、お兄ちゃんのために――身を引いたんだよっ!?
それなのに、そんな――誤解されるような事をして――。
【憂姫】
あれ、おかしいな……。
何でわたしが、泣いてるんだろ――?
【憂姫】
こよみが、何で毎日ご飯作ってくれてたかわかる?
誰に食べて欲しかったのか――。
【憂姫】
こよみは――全部お兄ちゃんのために――っ!!
【こよみ】
――私がご飯を食べて欲しいのは、時雨と憂姫ちゃんに――だよ。
こよみの番
【こよみ】
今日の夜、遥から話があるって言われているの。
【こよみ】
時雨を――この前みたいに、危険な目に会わせたくないの――。
【こよみ】
だから絶対に――来たらダメだよ――。いつものクセで、右手を胸にあてるこよみ。
その指にはいつもと違い――赤い指輪が、輝いていた――。
-
- 「この前みたいに」とはいつのことか。土砂崩れのことを、こよみは知らないはずではないのか。
自殺事件の整理
- 一人目の犠牲者は本当に自殺だったのか。
【千夜】
……本には、入水自殺の方法は書かれていなかったの。
- 一人目の水死体が上がった場所。それは時雨には思い出深い場所で、こよみと憂姫と、三人でよく遊んだ場所だった。家の場所が違う千夜と遥は、その場所を知らない。
指輪をはめたこよみ
【千夜】
時雨君、あなたはやっぱり――いつも重大な勘違いをしている。
【千夜】
私がこよみさんの前で正体を明かしたのは――。
【千夜】
時雨君――あなたを、こよみさんに渡したくなかったからよ――。
【千夜】
私は一夜の存在を守るために、本を探していた。
彼女に……普通の高校生としての暮らしを、取り戻して欲しかったから。
-
- 「一夜の存在を守るため」というのは、自分という人格を殺すこととイコールではないはず。
千夜とこよみ
- ナイフを取り出してこよみに対峙する千夜。かと思えば、時雨の首元にナイフを突きつけた。そして時雨の身体を、投げた。
- 投げられた時雨を助けたのは、こよみだった。こよみは本を手放したのだ。
- 指輪を手にとった先輩だったが、遥にナイフを刺されて倒れてしまった。
VS遥
- 遥を殺してBAD-END。千夜に「好き」と言うことができないまま死んでいく時雨。けれど「ずっと一緒」その言葉で安らかに、二人は溶け合い死んでいく。
- 遥はエレベータに仕込まれた硫化水素を知らない。
- 「もっと早く出逢えていたら」。それが遥の残した最後の意思。
少女の目覚まし
【千夜】
いい、一夜。
あなたが死ぬなんて、この私が許さないんだから――!!
【千夜】
――私は、あなたを守るために生まれたんだから――。
エピローグ
- 無理して登校した先輩が倒れて保健室に運ばれたのは、6月も真ん中を過ぎた頃。
- その後、時雨とこよみは仲良く病院のベッドで寝ていて、妹の憂姫に泣きつかれていたらしい。
【時雨】
この事件――どうしてここまで、隠匿されているんだ?
まるで誰かが、手助けしていた――みたいじゃないか。
【時雨】
硫化水素だって、遥はその存在を知らなかった。
【時雨】
遥に人の心が戻り始めた時――タイミング良く――エレベーターが上がってきたんだ。
【時雨】
まるで、アイツに真相を語らせない――ため、みたいに――。
- 指輪の真実?
【千夜】
これ、ただの発信装置よ――。
位置情報――送っているだけ、だわ――。
【千夜】
でも――この指輪は、どう見ても人工物よ。
こんなもの作れるなんて、私が知っている限り――一人しか――。
【千夜】
まさか――ね。
ありえないわ……。
- 千夜とこよみ、どちらを選ぶか。その問いに、時雨は先輩を選んだ。すると、
【一夜】
あっはっはー。
千夜は赤面して、隠れてしまいました〜っ♪
-
- 一夜と千夜は記憶の共有ができないはずではなかったのか?